【遺伝学】マラリアを媒介する蚊の遺伝的多様性
Nature
2017年11月30日
アフリカにおけるマラリア伝播の大多数は、マラリア原虫を媒介する蚊(ガンビエハマダラカとAnopheles coluzzii)が原因となっているが、これらの蚊の遺伝的多様性を示した論文が、今週掲載される。これらの生物種の遺伝的性質について分子レベルで解明を進めることは、殺虫剤の効力をできるだけ長期化させ、マラリア媒介生物の新しい制圧方法の開発を加速させるために極めて重要だ。
マラリアの罹患率と死亡率は、殺虫剤による介入によって大幅に低下したが、こうした成果は、蚊の集団における殺虫剤抵抗性レベルの上昇とその他の適応的変化によって減殺されるおそれがある。
今回、Alistair Milesたちの研究グループは、ガンビエハマダラカ1000ゲノムプロジェクトの一環として、多雨林、内陸サバンナ、沿岸のバイオームなど多様な生態環境にあるアフリカ8カ国の15地点で収集されたガンビエハマダラカとAnopheles coluzziiの標本765点についてゲノム塩基配列解読を行った。その結果わかったのは、蚊の個体のゲノムに170~270万個のバリアントアレルが存在していることで、これらの蚊を最も遺伝的に多様な真核生物種に分類できることが確認された。また、殺虫剤抵抗性において何らかの役割を果たしていることが知られる数種類の遺伝子において正の選択が最近起こったことを示す特徴も見つかった。例えば、Vgsc遺伝子の‘kdr’という変異は、殺虫剤(DDTとピレスロイド)に対する感受性を低下させる。
Milesたちは、蚊の制圧方法を設計する際に蚊の集団の遺伝的多様性のレベルが高いことを考慮に入れるべきだと主張している。
doi:10.1038/nature24995
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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