【進化学】「赤の女王」仮説を再び考察する
Nature
2017年11月30日
分類群の進化について、そのさまざまな原因の相互作用を理解するには、進化の道筋の然るべき段階で調べることが必要だという考えを示した論文が、今週掲載される。このモデル研究では、誕生から長い年月を経た分類群の衰退が不可避だと考えられることと「赤の女王」仮説(ダーウィン以降の進化生物学において最も影響力のある考え方の1つ)によって暗示される絶滅のランダム性とが矛盾しているように見えることに対する説明が得られた。
「赤の女王」仮説は、生物種間で継続的に起こっている進化的軍拡競争を記述したものであり、絶滅率一定の法則を説明するためにLeigh Van Valenによって提唱された。Van Valenは、ある1つの分類群が絶滅する確率がその分類群の存在期間と無関係なことを発見して、この法則を打ち立てた。化石記録の大半は、分類群の個体数、多様性又は生息域の経時変化を示すグラフの形が帽子に似ており、出現当初は少なく、中間期にピークに達し、絶滅する頃に再び少なくなることを示しているが、Van Valenの知見は、こうした化石記録と相いれない。
今回、Indre Zliobaiteたちの研究グループは、分類群の最終的な絶滅ではなく、その拡大のピーク期を考えれば、このパラドックスを解消できることを明らかにした。Zliobaiteたちは、ピーク期に分類群の種を抑制する要因が競争と関係している可能性が高く、当初の多様化と最終的な絶滅を抑制する要因は確率論的な非生物的要因と関係している可能性が高いという考えを示している。従って生物種の絶滅可能性の有無と絶滅時期を明らかにするには、末期の個体数減少と絶滅ではなく、ピークを過ぎたばかりの時期を調べるべきだとされる。
doi:10.1038/nature24656
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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