【天体物理学】探査衛星「悟空」による宇宙線電子の測定
Nature
2017年11月30日
宇宙線電子とその反物質である宇宙線陽電子のエネルギースペクトルが、暗黒物質探査衛星(DAMPE)によって、これまでにない高いエネルギー分解能で直接測定された。この新知見は、特定の宇宙線電子・陽電子の起源の謎を解明するための研究に新たな手掛かかりとなる可能性がある。この研究の詳細を報告する論文が、今週掲載される。
高エネルギー宇宙線電子・陽電子の測定は、天の川銀河における高エネルギー過程に関する手掛かりをもたらし、暗黒物質粒子の消滅(暗黒物質粒子が電子-陽電子対に変換する現象)や崩壊の観測を可能にするかもしれない。エネルギースペクトルの直接測定は、これまでの気球を用いた実験や宇宙空間での実験で最大約2テラ電子ボルト、地上の望遠鏡アレイによる間接観測では最大約5テラ電子ボルトまでしかできていない。
中国のDAMPEは、「悟空」という愛称があり、約10テラ電子ボルトまでのエネルギー範囲で宇宙線電子・陽電子の検出ができる。今回のYi-Zhong FanとDAMPE Collaborationの研究者の共著論文には、25ギガ電子ボルト~4.6テラ電子ボルトのエネルギー範囲で、極めて高いエネルギー分解能と低バックグラウンドで宇宙線電子・陽電子の直接測定が行われたことが報告されている。その結果、約0.9テラ電子ボルトにおいてスペクトルの折れ曲がり(高エネルギー域で観測される宇宙線電子・陽電子の数の予想外の減少)が判明し、これまでの間接測定の結果が確認された。
doi:10.1038/nature24475
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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