【人類学】物語を巧みに話せることの効用
Nature Communications
2017年12月6日
フィリピンの先住民族「アイタ」の狩猟採集社会において物語を話す能力と協力行動が関連していることを明らかにした論文が、今週掲載される。また、巧みな語り手の方が、大きな社会的な成功と繁殖の成功を収めていることも明らかになった。
物語を語るという行為は、人間社会のどこにでも存在し、貴重な知識の発信方法だと考えられている。しかし、物語を語ることの具体的な効用を明らかにするのは難しい場合がある。
今回、Daniel Smithたちの研究グループは、アイタの社会において物語を語ることが個人と集団にどのような利益をもたらしているのかを調べた。その結果分かったのは、昔から語られている物語のテーマの大部分が協力と社会規範であり、このことは、他の7つの狩猟採集社会に対象を広げて物語を語ることを分析した結果とも一致していた。今回の研究で行われた実験的ゲームでは、巧みな語り手のいる集団に属する人間の方が、そうでない集団に属する人間よりも協力的に振る舞った。さらに、社会的パートナーとして選ばれるかどうかを予測するための判断材料として物語を語る技能が最も優れており、巧みな語り手がパートナーに選ばれる確率がそれほどでもない語り手のほぼ2倍となり、生存子数は平均で0.5人多かった。
Smithたちは、物語を語ることが協力の増進に重要な役割を果たしており、この機能が、物語を語ること自体の普及に有利に働いたという考えを提唱している。
doi:10.1038/s41467-017-02036-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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