持続可能な米国の牛肉産業はあり得るのか
Nature Ecology & Evolution
2017年12月5日
現在の米国の牛肉消費量の最大45%をより持続可能な形で供給するモデルが、今週掲載の論文で紹介される。その研究は、もし米国人が毎週の牛肉消費量を半減させれば、米国の牛肉産業が環境的に持続可能なものになる可能性があることも示唆している。
米国の牛肉産業は、牛そのものばかりではなく、牛に与えるために栽培される飼料からも、有数の温室効果ガス排出者として挙げられることが多い。今回、Gidon Eshel、Ron Miloたちは、持続可能な牛肉生産について、「草地(牧草および現地でベール化された少量の干し草)、およびモルトフィード(ウイスキーかす)やビートパルプ(砂糖大根かす)などの食品工業副産物で肥育された牛」と定義した。
この持続可能な牛肉生産の定義を使用した著者たちのモデルから、現在のところ飼料栽培に利用されている推定3200万ヘクタールの耕地が植物系食料の生産に転用できる可能性があることが見いだされた。そして、この転用が窒素肥料と灌漑用水の使用量も激減させる一方、温室効果ガスの排出量も大幅に減少させることが示唆された。著者たちは、土地利用の変化と放牧との組み合わせにより、現在の牛肉生産量の45%が持続可能なものになる可能性があることを明らかにした。また、すでに利用されている放牧地の面積を、生産力の低い草地の使用をやめることによって(約1億3500万ヘクタールまで)半減させても、現在の生産量の43%が持続可能な形で供給されることも分かった。
最後に研究チームは、1人当たりの毎週の牛肉消費量を、約460グラムという現在のレベルから約200グラムまで減少させると、米国の牛肉産業全体が(この論文の狭い定義による)環境的に持続可能なものになる可能性があることを示した。著者たちは、これが持続可能性に関する1つのあり得るモデルと定義にすぎないことを強調し、どんなモデルもタンパク質必要量を維持しなければならないことにも注意を促している。しかし、牛肉では飼料から食料へのタンパク質変換効率が極めて低いため、検討した全ての代替植物に飼料用の土地を転用しても、タンパク質供給量は少なくとも維持され、例えば大豆のような高タンパク質植物への転作では、その土地のタンパク質生産量が5倍に向上する。
関連するNews & Views記事では、Les Firbankが「(著者たちは)最終的な推定が大胆な仮定と予備的なデータに基づくものであることを認めているが、その論理的で透明性のある枠組みは、計算を全国規模で行うことを可能にし、政策の再構成に向けた現実的な取り組みを行うものである」と述べている。
doi:10.1038/s41559-017-0390-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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