反予防接種と純粋さと自由
Nature Human Behaviour
2017年12月5日
子どもに予防接種を受けさせたがらない米国の親たちは、純粋さ(purity)や自由(liberty)といった道徳的価値に強く関心を寄せていることを示した論文が今週掲載される。今回の研究は、そうした道徳的価値を盛り込んだキャンペーン活動の方が、公正さや害の予防などの考えに焦点を合わせるよりも有効な可能性があることを示唆している。
低い予防接種率が個人や集団に及ぼす危険性を強調するキャンペーン活動が行われているにもかかわらず、自分の子どもに予防接種を受けさせるか否かの判断は、米国の親たちの間の課題であり続けている。
Avnika Aminの研究グループは、13歳以下の子を持つ米国の1100人の親たちを対象にオンライン調査を実施した。調査では、子どもへの予防接種に対する親の抵抗の程度が評価され、善悪の判断時にさまざまな道徳的価値をいかに重視するかが探られた。その結果、予防接種に強く抵抗する親たちは、自由や純粋さといった道徳的価値を重視する傾向が、予防接種に抵抗のない親たちと比べて2倍高いことが判明した(抵抗の少ない親たちにとって、自由とは、個人の責任、自由(freedom)、所有権、市民生活への国家の関与への抵抗といった考えと関連するものであり、純粋さに関する懸念は、境界的なもの、また汚れを避けることに関するものであった)。また、純粋さを重視する傾向は、予防接種に中程度に抵抗を覚える親たちについては、抵抗の低い親たちの2倍に上ることも明らかとなった。
研究グループは、予防接種に反対する感情に道徳的価値が強い影響を与えることに注目した研究は過去にほとんどなかったと述べている。著者たちは、今回の結果は相関性の存在を示すものであり、因果関係があるとは言えないものの、健康に関する人々の判断の道徳的基盤を調べることは、公衆衛生をめぐるコミュニケーションの改善を目指す上で検討しがいのある研究領域となると示唆している。
doi:10.1038/s41562-017-0256-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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