チンパンジーと未就学児は正義が行われることを望む
Nature Human Behaviour
2017年12月19日
チンパンジーも人間の6歳の子どもも、自分自身がコストを引き受けてでも、悪いことをした者が罰せられるところを見たいと思うことを示した論文が今週掲載される。今回の知見は、社会規範を遂行して協力関係を強める手段としての「ピア懲罰」の進化に関する新たな洞察をもたらすものである。
過去の研究では、ヒトも一部の動物も、害を被る他者を見ると共感的な苦痛を感じて心配することが報告されている。しかし成人については、罰を受けるに値する者や、反社会的な行動を取った者が害を受ける際には、喜びの感情を覚えることも分かっている。
Natacha MendesとNikolaus Steinbeisの研究チームは新たな実験を考案し、懲罰が行われる状況を子どもが見たいという動機を発達させる時期について、また同様の動機がヒトに近縁のチンパンジーにも見られるか否かについて検討を行った。実験ではまず参加者に対して、2つのタイプのキャラクターが紹介される。一方のタイプは、自分たちと食べものやおもちゃを分け合う(社会性のある)キャラクターであり、もう一方は、そうしたものを独り占めする(社会性のない)キャラクターである。次にこれらのキャラクターたちは、実験参加者たちの目に触れない場所で体罰を受ける。実験のルールとして、キャラクターが受けている罰を実験参加者たち(子どもあるいはチンパンジー)が直接見るためにはコストを払わなければならない(子どもの場合はレアもののステッカーを手放さなくてはならず、チンパンジーの場合は罰が行われている場所へ通じる扉をこじ開けなくてはならない)。実験の結果、チンパンジーおよび6歳児は、社会の規範に従う他者よりも、反社会的な他者が罰せられる状況を見ることを動機付けられるが、4歳児または5歳児は動機付けられないことが分かった。
今回の知見は、「6歳という年齢は、子どもが正義の達成のためにリソースを自ら進んで犠牲にする時期に相当する、ヒトの情動および認知の発達における重要な時期である」という仮説の証拠となるものである。公平な罰が加えられる状況を見たいという個人的な動機付けがチンパンジーにもみられるという事実は、公平な協力を維持する戦略が進化的に古い起原をもつことを示唆するものと言えるかもしれない。
doi:10.1038/s41562-017-0264-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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