【ウイルス学】簡素化されて有効性と簡便性が向上したHIV治療法
Nature Communications
2018年1月10日
作用時間の長い薬剤送達システムによるHIV感染の治療と予防が可能なことを明らかにした論文が、今週掲載される。新たに開発された週1回投与の経口投与剤形は、ブタを使った実験で有効性が実証され、患者の治療遵守を高める可能性が明らかになり、それにより治療の失敗と薬剤耐性ウイルスの出現を減らせるかもしれない。
現在のHIV治療法は、錠剤の連日投与に依存しており、患者が指示された通りに治療薬を飲まないことが、HIVの治療と予防の効率を高める上で妨げになっている。今回、Giovanni Traversoたちの研究グループは、数種類の抗レトロウイルス薬を組み合わせて1回分の投薬量とした週1回投与の経口送達系を開発した。このモジュール式薬剤送達系には、薬剤が包み込まれ、その後に中身が飛び出すようにできているため、経口送達ができ、胃腸管に長時間滞留し、最大6種類の製剤を組み込むことができる。Traversoたちは、ブタを使った実験で、新たに開発した「錠剤」から3種類の抗レトロウイルス薬が徐々に放出され、十分に高い薬剤濃度が1週間維持されることを明らかにした。また、数理モデル研究も行われて、この治療法によって治療の失敗が有意に減ると考えられ、HIV暴露前予防投薬の有効性が高まることで高リスク集団におけるHIVの新規症例を予防できる可能性が示された。
ブタを使って得られた今回の研究成果によって今後の展開が期待されるが、このブタモデルはHIV感染モデルではないので、今回報告された治療法の安全性と有効性を明らかにするための研究を行う必要がある。
doi:10.1038/s41467-017-02294-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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