塩分の多い食餌が脳の健康に悪影響を及ぼす仕組み
Nature Neuroscience
2018年1月16日
塩分の多い食餌によって腸内の免疫系に変化が生じ、それが認知機能低下の原因となる可能性のあることがマウスの研究で明らかになった。この結果を報告する論文が、今週掲載される。
ヒトの場合には、塩分の多い食事が高血圧の原因となり、心血管疾患の発症リスクを高めることが知られている。また、細胞レベルでは、過剰な塩分摂取が血管内皮細胞(血管の内側を覆い、血管緊張を調節する細胞)の機能不全を引き起こすことが明らかになっているが、この機能不全がさまざまな器官にどのような長期的影響を及ぼすのかは分かっていない。
今回、Costantino Iadecolaたちの研究グループは、一部の人々の食事に含まれる過剰な塩分に相当する高塩分の食餌をマウスに与える実験を行った。その結果、実験開始から数週間以内に血管内皮の機能不全と脳血流量の減少が発生し、いくつかの行動試験で認知機能不全も認められたが、血圧に変化はなかった。また、高塩分の食餌によって腸内のTH17細胞(白血球の一種であるヘルパーT細胞の1つ)の数が増え、TH17細胞が放出する炎症促進性分子(IL-17)の濃度が上昇した。さらにIadecolaたちは、高塩分の食餌によって脳血管の機能と挙動にマイナスの影響が及んだ原因が、血流中のIL-17の濃度上昇であることも明らかにした。
以上の結果はマウスの研究によって得られたものだが、今回の研究では、IL-17がヒトの脳内皮細胞にも同じような影響を及ぼすことも明らかになっており、このことは、塩分の多い食事が、血圧に影響を及ぼすかどうかにかかわらず、ヒトの脳の健康にもマイナスの影響を及ぼす可能性を示している。また、マウスに再び通常の食餌を与えることや薬理学的介入によって高塩分の食餌による悪影響を低減できることが判明し、生活習慣を変えたり、新しい処方薬を服用したりすることが、この悪影響の低減や防止に役立つ可能性のあることが示唆されている点も重要だ。
doi:10.1038/s41593-017-0059-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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