【がん】バスケット試験による臨床試験
Nature
2018年2月1日
このほど実施された臨床試験で、ある種の変異を標的とする抗がん剤の有効性が、腫瘍組織の種類と変異の性質自体に依存していることを明らかにした論文が、今週掲載される。この研究から、分子生物学に基づく臨床試験によって、遺伝的変異がもたらす影響の解明が進むことが明確に示された。また、この知見はがんの個別化治療の開発にも役立つ可能性がある。
HER2遺伝子とHER3遺伝子のさまざまな変異が、広範な種類のがんに見つかっている。これらの変異の一部はHER2タンパク質の過剰発現を引き起こし、発がんに至るが、その他多くの変異の特徴は解明されていない。今回、David Hymanたちの研究グループは、HER2遺伝子とHER3遺伝子に種々の変異を有する乳がん、肺がん、膀胱がん、大腸がんの患者(合計141人)に対するネラチニブ(HER2タンパク質の活性を阻害する医薬品)の有効性を検討した。その結果、ネラチニブに対する反応は変異と組織の種類によって決まり、HER2遺伝子に変異のあるがんに限られることが分かった。
大部分のゲノムバリアントの遺伝的重要性と臨床的重要性が解明されていないため、がんの個別化治療に向けた動きは進展していない。今回の研究は、こうした状況を変える上で役立ち、前臨床モデルで予測されていなかった新知見をもたらしているだけでなく、いわゆる「バスケット」試験(がんが見られる組織ではなく、今回のHER遺伝子において見いだされたように、変異の種類を重視する臨床試験)の価値を明確に示している。
doi:10.1038/nature25475
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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