【医学研究】長時間作用するHIV治療用注射剤
Nature Communications
2018年2月7日
マウスを用いた研究で、HIV治療薬の長時間作用型注射製剤が実証されたことを報告する論文が、今週掲載される。マウスの血液や組織におけるHIVの複製阻害に必要な治療薬の濃度が、1回の注射で1カ月以上も維持されたのだ。
抗レトロウイルス療法が導入されて、HIV感染症は、死に至る疾患から管理可能な慢性疾患へと変容した。しかし、患者は日々の投薬計画に従わなければならない。投薬計画の遵守が最適でないと、抗レトロウイルス療法に耐性を示すHIV株が出現する可能性があるためだ。投与頻度の低い(例えば、週1回、月1回あるいは2カ月に1回の投与で済む)新たな治療薬は歓迎される可能性があると考えられる。
今回、Howard Gendelmanたちの研究グループは、抗レトロウイルス治療薬のドルテグラビルに長い炭素鎖を付加して化学修飾し、このプロドラッグ(そのままでは不活性だが体内で代謝を受けると薬理作用を示す化合物)をポリマーのカプセルに封入した。マウスの実験で、この最終形態の製剤は、4週間以上にわたって強力な抗レトロウイルス作用を示した。
HIV治療のための長時間作用型注射製剤は、数種類のものが臨床試験中だが、ドルテグラビルは、すでに患者への投与が少なからず行われている。また、この論文で発表された注射製剤は、ウイルスがリザーバーを形成する細胞や組織に対する浸透性が改善されており、現在臨床試験が行われている他の長時間作用型抗レトロウイルス治療薬より注射量が少なくて済む。今後の研究では、HIV感染患者の治療および健常者の予防の臨床試験を行う可能性や、ドルテグラビルと他の薬剤の同時処方が焦点になるだろう。
doi:10.1038/s41467-018-02885-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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