【量子情報】スピンを利用する量子コンピューティングの新展開
Nature
2018年2月15日
電子スピンを利用した固体量子計算プラットフォーム研究の新たな進展を報告する2編の論文が、今週掲載される。一方の研究では2ビットのプログラム可能なプロセッサーが創出され、もう一方の研究では、単一電子スピンと単一光子との強結合が生成された(この強結合によって、量子コンピューターの基本構成要素である孤立したキュービットの相互作用が実現する可能性がある)。
将来的にスピンを利用した量子計算システムを構成することになる個別要素の開発は、かなりの進歩を遂げているが、このほどThomas Watsonたちの研究グループは、これを大きく前進させて、2種類の量子アルゴリズム(ドイチュ・ジョサアルゴリズムとグローバー検索アルゴリズム)を実行するようにプログラムできる2キュービットデバイスを作製した。ドイチュ・ジョサアルゴリズムは、古典的手法ではなく量子的手法を用いた方が解を得やすいように作られたテスト問題で、グローバー検索アルゴリズムは、データベース検索に利用できる。今回開発されたデバイスは、より柔軟に応用できるスピンを利用した大型プロセッサーへの道を開くものだ。
半導体スピンキュービットを用いて構築された量子コンピューターには、超伝導量子コンピューターより長い間量子状態を保持できるという長所がある。しかし、半導体スピンキュービットは、相互作用が弱いため、量子プロセッサーが機能するために必要な結合がなかなか得られない。既存の結合法(いわゆる「交換結合」と双極子-双極子相互作用)は、比較的局所的な性質を有しており、離れた量子ビットを結合させるためにはマイクロ波光子のような「仲介者」が必要とされる。
一方、Jason Pettaたちの研究グループは、マイクロ波共振器内に閉じ込められた光子をシリコン二重量子ドット中に捕獲された電子スピンと強く結合させたことを明らかにした。この構成は、光子と電子スピンの間にコヒーレントな界面を確実に形成するために十分なスピン-光子結合率を達成でき、スピンを利用した大規模な量子プロセッサーの実現がさらに一歩近づいた。
doi:10.1038/nature25769
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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