【生態学】山岳地帯の鳥類種の多様性
Nature
2018年2月22日
山岳地帯の鳥類個体群は、標高が増すにつれて多様性が減少するが、多様化は速くなることを明らかにした論文が、今週掲載される。この新知見は、種の豊かさが中程度の標高で最大化し、種の豊かな個体群を維持するためには局所的な多様化速度が高いことが必要だ、という長年の考え方に反した内容になっている。
山脈は、進化が生じる際に重要な役割を担っている。山脈は、複雑で多様な地形になっており、高度に分離していることが多く、生息地としては新種の発生につながる個体群の遺伝的隔離が生じやすい。それと同時に、こうした特性のために山岳地帯の研究は困難を極めることがよく知られている。
これに対して、今回のIgnacio QuinteroとWalter Jetzの研究では、世界の主要な山脈(46か所)に生息する8470の鳥類種(既知の鳥類種全体の約85%)の分布と多様性、進化を調べた。これまでの数多くの研究では、種の多様性が中程度の標高で最大化するとされてきたが、QuinteroとJetzは、中程度の標高に生息するさまざまな鳥類種の過剰提示を補う新しいサンプリング法を用いて、全ての山脈において種の豊かさが標高の増加に伴って減少することを明らかにした。標高の高い地域では、1日の気温変動や風力と日射量が大きくなるなど極端な環境条件になる。
QuinteroとJetzは、さまざまな鳥類種の進化的類縁関係を調べて、標高が高くなると種の集合体の分布がまばらになることと種の多様化速度の上昇が関連することを明らかにした。この新知見は、最近になって新種の出現率が低下したために生物相の多様性が減少した、とする学説と真っ向から対立している。これに対してQuinteroとJetzは、標高の高い地域に存在する高地に適応した独特な生物相を維持するためには、種の多様化という現在も継続する強力なプロセスが必要だと考えている。
さらに、QuinteroとJetzは、過去に気温の変化率が高かった山岳地帯に生息する種の集合体はより急速に多様化することも明らかにした。この新知見は、山岳地帯で進化が発生する上で気候の変動が重要であることを明確に示している。
doi:10.1038/nature25794
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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