【ウイルス学】タンパク質の集合に必要な遺伝子を最も多く含む巨大ウイルスの発見
Nature Communications
2018年2月28日
このほど発見された2種の巨大ウイルスTupanvirus株について説明した論文が、今週掲載される。これらの巨大ウイルス株には、全ての既知のウイルスにおいてタンパク質の集合に必要な遺伝子セットが最も多く含まれており、Tupanvirus株によって巨大ウイルスの進化に関する手掛かりがもたらされる。
巨大ウイルスが発見されて以降、ウイルスの進化に関する論争が巻き起こっており、2つの著名な学説が存在する。一方の説によれば、もともと単純だったウイルスの祖先が感染宿主から遺伝子を獲得して複雑な巨大ウイルスに進化したとされ、もう一方の学説によれば、巨大ウイルスの祖先も巨大で、進化の過程で不要になった遺伝子が失われたとされる。
今回、Bernard La Scolaたちの研究グループは、ブラジルのソーダ湖と深海の堆積物から集められた試料から複数のTupanvirus株を発見した。La Scolaたちがこれらのウイルス株のゲノムを解析したところ、生物の3つのドメイン(アーキア、細菌、真核生物)に属する既知のウイルスや生物と類似した遺伝子が含まれていることが明らかになった。しかし、これらの遺伝子の約30%については、相同体が他の生物で同定されていない。また、Tupanvirusは、他のウイルスと比較すると、タンパク質の集合に関与する遺伝子が最も多く、20種のアミノ酸全てをタンパク質に組み込むために必要な遺伝子が備わっていることも判明した。現在のところ、これら20個の遺伝子の起源は明らかになっていない。
さらなる研究が必要だが、今回のTupanvirusの発見は、ウイルスの進化を解明する上で重要な一歩になるとLa Scolaたちは結論付けている。
doi:10.1038/s41467-018-03168-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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