今世紀末までにキングペンギンの70%が消失するか生息地を移動する
Nature Climate Change
2018年2月27日
温室効果ガスの排出について何らの緩和策もとられなかった場合、21世紀末までにキングペンギンの70%(約1100万組の繁殖つがい)が突如消失、あるいは移動することになるというという予測を示した論文が、今週掲載される。
低温を好む生物種は、気候が温暖化すると極地に向けて移動すると予想されることが多いが、キングペンギンの場合には、生息地が分断化されている(南大洋上の島々の連続した不凍地帯でのみ繁殖している)ため、温暖化した時の移動は複雑である。キングペンギンは、生息可能な島々を飛び石を渡るようにして繁殖地を変えるしかないのだが、その餌場は、南極極前線とそれに関連した海洋湧昇流の位置の変化とともに連続的に移動する。
このように複雑な条件下で生物種の応答をモデル化するのは難しいため、Emiliano Trucchi、 Celine Le Bohecたちの研究グループは、個体群ゲノミクスと過去の個体群動態によって有効性が確認された生物物理学的・生態学的ニッチモデルを使って、キングペンギンの過去の生息地移動のシミュレーションを行い、将来的な脆弱地域を明らかにした。今回の研究では、キングペンギンの個体数の49%(クローゼー諸島とプリンスエドワード諸島で繁殖する個体)が生息地を完全に失い、21%(ケルゲレン諸島、フォークランド諸島、ティエラ・デル・フエゴ群島で繁殖する個体)は、採餌距離が長くなるために生息地を大きく変化させる、という予想が示された。ただし、生息地の大幅な縮小の影響は、ブーベ島でのコロニー形成とハード島およびサウスジョージア島での採餌条件の改善による個体数増加によって、一部相殺される可能性があることも明らかになった。
このモデル化の方法は、大きく断片化した生息地を占有する他の生物種にも役立つ可能性がある。
doi:10.1038/s41558-018-0084-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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