【持続可能性】アフリカの教育と小児栄養不良を示した地図
Nature
2018年3月1日
2000~2015年のアフリカ51か国での教育の不均等と小児栄養不良をモデル化した、極めて詳細なマップについて報告する2報の論文が、今週掲載される。これらのマップは、開発目標が達成されていない地域を明らかにする上で役立つことが期待されている。
小児期の栄養不良は、発育阻害、消耗症、平均以下の低体重といった形の発育不良につながることがある。その一方で、もう1つの重要な開発の焦点が学歴(「学校教育の修業年限」と定義される)であり、高い学歴は、人的資本の増強、社会移動の増加、男女平等の前進、女性の健康転帰の改善と関連している。
これらの要因を追跡調査する過去の研究では、全国レベルの傾向だけが注目され、地域規模での変動は把握されていなかった。今回、Simon Hayたちの研究グループは、数多くの村の子どもたちの学歴と年齢、身長、体重に関する調査データと国勢調査データを集め、地理空間モデルの作成技術を用いてこれらのデータとそれぞれの地域の気候と地理に関する情報を組み合わせ、データが欠落した地域の数値を推定した。そして、Hayたちは、アフリカの子どもの15年間にわたる発育不良と学歴の推移を示す、5 km四方規模のマップを作成した。
このマップでは、大部分のアフリカ諸国、特にサハラ砂漠以南のアフリカのかなりの部分(特に東部と南部)で、この15年間に栄養不良が改善されたが、それぞれの国内に顕著な地域差が残っていることを明らかにしている。また、Hayたちは、チャドやソマリアといった改善が遅れている多くの国や地域では、子どもの健康改善に対する国際的支援が少なく、長期的な内戦が起こっていることを指摘している。アフリカの多くの地域は、世界保健機関が子どもの栄養について設定した2025年の目標を達成すると思われるが、サハラ砂漠とスーダンサバンナの間に位置するサヘル地域では、発育不良率が高いレベルで推移することが予想されている。さらに、現在の改善のペースでは、アフリカにおいて2030年に栄養不良を撲滅するという国連の目標を達成できる国はないと考えられている。
また、このマップからは、2000~2015年の学歴の平均値に全体的な底上げが見られるが、アフリカ大陸全体、特にサヘル地域では、学歴の大きな格差と基本的な教育目標の不達成が続いていることが明らかになった。さらに、中央アフリカと西アフリカでは男女間の教育の不均等が一般的に見られ、例えば、チャドのKabia州では、男性の就学年数が女性より5~6年長いのが通例になっている。
World Viewに同時掲載されるコフィ・アナン(コフィ・アナン財団会長、元国連事務総長)の論文では、これらのマップに、時の経過による進歩となかなか解消できない格差の両方が示されている点が指摘されている。アナンは、この種の情報は、政府と国際機関に対して、各種プログラムの方向性とリソースの投入先を示している、とした上で、「このような精度の高い知見は、行動を起こすという非常に大きな責任をもたらす」と述べている。
doi:10.1038/nature25761
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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