【がん】小児がんのゲノム的特徴
Nature
2018年3月1日
1000例を超える小児がんの特徴の詳細を、ゲノムレベルと分子レベルで明らかにした2編の論文が、今週掲載される。小児がんの原因解明に手掛かりをもたらし、新たな治療法の開発に役立つ可能性もある。
Stefan Pfisterたちの研究グループは、分子的に異なる24タイプのがん(最も高頻度のタイプと臨床的に重要なタイプが含まれており、中枢神経系の腫瘍に重点を置いた)を患う若い患者914名を対象とし、生じたさまざまな遺伝的変化を同定した。全てのタイプのがんでDNA二本鎖切断の修復に関与する遺伝子の変異が見つかり、がん素因遺伝子候補において疾患の原因となる変異はこれらの患者の7%で見つかった。また、既存の標的療法あるいは現在開発中の標的療法が効きやすい可能性のある変異を持つ腫瘍は、全体の半数を占めた。
一方、Jinghui Zhangたちの研究グループは、こうした知見を他の局面にも適用し、DNAだけでなく、DNAから転写された情報にも注目した。Zhangたちは、1699例の小児白血病と固形腫瘍におけるDNA変異の解析と、ゲノム、エキソーム、トランスクリプトームの塩基配列解読を行った。その結果、小児がんと関連する遺伝子が142個同定されたが、成人のがんに関する類似研究で見つかった遺伝子と一致したのはそのうちのわずか45%であった。また、Zhangたちは、変異固有の特徴として、変異過程に特有の痕跡が残っているゲノム領域を11か所発見し、その中には紫外線曝露を原因とする特徴も含まれていた。
以上の研究結果を総合すると、小児がんにドラッガブルな標的が存在することへの期待が高まるが、小児がんと成人のがんとの違いが数多く存在することも明らかになった。新たな治療法が次々と開発されていることから、この事実を考慮に入れておく必要がある。
doi:10.1038/nature25795
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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