【遺伝学】局所環境が遺伝子発現に影響を及ぼす
Nature Communications
2018年3月7日
このほどカナダのケベック州の住民約1000人からなるコホートのデータ解析が行われ、大気汚染などの局所環境要因への曝露による遺伝子発現と健康状態の変化に及ぶ影響が、遺伝的祖先による影響より大きいことが判明した。この結果を報告する論文が、今週掲載される。
世界の多くの地域では、工業化と化石燃料エネルギーの使用量増加が、大気汚染と大気の有害化をもたらしている。こうした環境要因に対する応答は、1人1人の遺伝的背景に応じて異なっており、特定の疾患の遺伝性と発症リスクに個人差が生じていると考えられている。しかし、(1)環境要因への曝露を原因とする疾患リスクと(2)環境要因への曝露とゲノムの相互作用を原因とする疾患リスクについては、解明が進んでいない。
今回、Philip Awadallaたちの研究グループは、ケベック州のさまざまな地域に居住する1007人から集めた環境要因への曝露、健康状態、遺伝子発現レベル、およびゲノム全域の遺伝的変異情報に関するデータを評価した。その結果、血液サンプルの遺伝子発現プロファイルに対する環境の影響が、遺伝的祖先による影響よりも大きいことが判明した。さらに、微小粒子状物質(PM2.5)、二酸化窒素、二酸化硫黄などによる局所的大気汚染が、心血管代謝と呼吸器の形質に影響を及ぼす遺伝子発現を変化させ、結果として肺疾患と動脈硬化を発生させる可能性のあることも分かった。
Awadallaたちは、局所環境が疾患リスクに直接影響を及ぼす過程が今回の研究知見によって実証され、環境問題に関する個々人の応答が遺伝的変異によって左右されると結論付けている。
doi:10.1038/s41467-018-03202-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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