【植物科学】作物の水利用効率を向上させる方法
Nature Communications
2018年3月7日
タバコの光合成に関与するタンパク質の発現を上昇させると、タバコが失う水分量を25%減らすことができる、という研究結果を報告する論文が、今週掲載される。この新知見は、水源に限りがある状況で作物生産量を増やす上で、重要な意味を持つ可能性がある。
干ばつは地球規模の問題であり、これまでより少ない灌漑用水で増加傾向にある世界の人口に十分な量の食料を供給することの重要性が増している。植物が吸収した水分は、葉の気孔から放出され、これによって二酸化炭素が植物に流入して光合成が起こる。そのため、水分の放出と二酸化炭素の獲得のバランスを取ることで、作物の水利用効率を向上できる可能性がある。しかし、この点に関する進歩は限定的だった。
今回、Stephen Longたちの研究グループは、光合成に関与するphotosystem II subunit S(PsbS)タンパク質の発現上昇によって、二酸化炭素の取り込みに負の影響を及ぼさずに水利用効率を高められることを明らかにした。圃場試験では、PsbSを過剰発現するタバコは、野生型のタバコと比べて、水の喪失量が平均で25%減った。Longたちは、PsbSの過剰発現によって生じる一連の事象によって光に応答した気孔の開口が減り、結果として水の喪失が減ると考えている。
Longたちは、PsbSの役割は緑色植物に普遍的なものであるため、今回の研究で開発された方法を他の作物種に適用しても、同様に水利用効率を向上できる可能性が高いと主張している。
doi:10.1038/s41467-018-03231-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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