加齢に伴う眼疾患の患者で、細胞シート治療を検証
Nature Biotechnology
2018年3月20日
滲出型加齢黄斑変性の2人の患者にヒト胚性幹(ES)細胞由来の網膜色素上皮細胞シートを移植したところ、1年間で視力が改善したことを報告する論文が、今週掲載される。この細胞シートは、ヒトES細胞から作製された細胞と合成足場を組み合わせた培養組織である。このシートの移植では、患者の黄斑変性は回復するわけではなく、また、治療効果や安全性は今後、大規模な臨床試験で調べる必要があるだろう。
網膜色素上皮(RPE)は、網膜の後方、光受容細胞に隣接する単層の細胞層で、光受容細胞を健康に保つために極めて重要な働きをする。滲出型加齢黄斑変性では、網膜中心部で液体の滲出によってRPEに損傷が起こり、光受容細胞が死に、中心部の視力が失われる。
これまでの研究でも、ヒト多能性幹細胞由来のRPE細胞が黄斑変性患者の目に移植されており、その際は、方向性を持たない懸濁液中の細胞、あるいは細胞自体が分泌するマトリックス上に方向性を持って並んだ細胞層として移植していた。今回の研究でLyndon da Cruzたちは、薄い樹脂製の足場上でRPEを培養して、方向性を持って細胞を並ばせ、移植中および移植後に培養組織が安定になるようにした。
Cruzたちによれば、2人の患者に移植したRPE細胞は1年間生存し、患者の視力が改善したという。例えば、患者は手術前にはメガネを使用しても文字などを読むことはできなかったが、手術後には、通常の老眼鏡を使って、ゆっくりとではあるが読めるようになった。
この方法について規制当局からの認可を得るには、さらなる研究が必要である。
doi:10.1038/nbt.4114
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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