【生物工学】ホップを使わずにホップの香り豊かなビールを造る
Nature Communications
2018年3月21日
ビール酵母を改変して、ビールのホップの香りの一因になっている2種類の分子を産生させたことを報告する論文が、今週掲載される。この知見は、ビール産業のホップの花に対する依存を減らし、ビールのホップの香味を安定的に作り出す上で役立つ可能性がある。
ホップは、ビール醸造の原料だが高コストで、ホップの豊かな味を安定的に得るには、ホップの花に含まれる精油(エッセンシャルオイル)が量的に安定している必要がある。ただし、花に含まれる製油の量は、遺伝、環境、食品加工に関連した諸要因の影響を受け得る。
今回、Jay Keasling、Charles Denbyたちの研究グループは、ビール酵母を改変して、リナロールとゲラニオールという2種類の分子の産生量を増やした。リナロールとゲラニオールは、ホップの花の精油に含まれており、ホップの香味の主要な決定因子であることが分かっている。研究グループは、ミントとバジルから抽出されたDNAをビール酵母株に組み込み、改変されたビール酵母株が、ビールのホップの香味を生み出すことを明らかにした。40人の被験者が参加した二重盲検官能味覚試験では、改変ビール酵母株を用いて醸造したビールが、通常のドライホップビールよりホップの香味が豊かであることが明らかになった。
研究グループは、リナロールとゲラニオールがビールのホップの香味を生み出すが、ホップでビールに苦味をつける伝統的な方法によって得られる本格的な香味は、この2種類の分子よりも多様な分子群によって生み出されている可能性が高いことを指摘している。
doi:10.1038/s41467-018-03293-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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