【古生物学】恐竜の営巣戦略は生息分布に影響を与えたか
Scientific Reports
2018年3月15日
恐竜の巣造りは特定の材料と方法によって行われており、このことが卵を温める熱に影響を及ぼし、ひいては恐竜の生息場所に影響を与えた可能性があることを報告する論文が、今週掲載される。
今回、名古屋大学の田中康平(たなか こうへい)たちの研究グループは、恐竜のクレードごとに営巣に好んで用いる材料が異なっており、土や植物の材料を用いて塚の巣を造るクレードもあれば、砂に穴を掘って卵を産みつけるクレードもあることを発見した。一部の竜脚類がよく造った穴の巣では、孵卵は主に太陽光からの熱に依存しており、その温度は気温よりやや高い程度だった。他の竜脚類とハドロサウルス類は、土や植物でできた塚の巣を造ることが多く、これらの土と植物は、微生物が有機物を分解する際に発生する熱で温められ、周囲の空気より有意に暖かくなっていた。
田中たちは、恐竜の営巣習性の意義について理解を深めるため、ワニ類、鳥類といった現生動物の営巣戦略を調べて、寒冷な気候で生息していた恐竜が特定の種類の巣を利用していたかどうかの評価を行った。また、田中たちは、恐竜の巣、卵、卵殻に関する既存のデータを比較して、遮蔽された巣を造るために好んで使われた特定の材料があったかどうかの評価を行った。この比較においては、現生動物において観察される巣の種類、営巣材料、孵卵のための熱源の関係が、絶滅した非鳥類型恐竜の営巣習性に関する手掛かりになり得ることが示唆された。田中たちは、塚の巣を造った恐竜は、北極などのより寒冷な北部の気候の土地で繁殖できるようになり、恐竜が好んで用いる営巣様式が生息地の決定に寄与していた可能性がある、と結論付けている。
doi:10.1038/s41598-018-21386-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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