【がん】最先端のAIによって乳がん検出率が高まる可能性
Scientific Reports
2018年3月15日
画像の中から特定の物体を検出するために広く用いられているディープラーニング(深層学習型)人工知能(AI)を用いて、乳がんの早期発見率を向上できることを報告する論文が、今週掲載される。
深層学習は機械学習の一種であり、生物学的な脳(例えば、ヒトや動物の脳)の働く仕組みに関する知識から着想された深層学習ネットワークは、ヒトがアノテーションを行ったデータセットを「学習」して、ヒトに近い画像認識能力を発揮する。
今回、Dezso Ribliたちの研究グループは、最先端の深層学習技術を用いた、改良型コンピューター支援検出(CAD)システムを提案している。この改良型CADシステムは、トレーニングを行うことで乳房病変を検出し、その位置を特定できる。CADシステムは過去20年間にわたり、乳房X線像の解析と、検討を要するような疑わしい領域の標識によって放射線科医による乳がんの検出に役立ってきた。ところが、こうした技術は、高い利用コスト(米国で年間4億ドル)を伴い、その有用性については議論がある。
Ribliたちの改良型CADシステムは、がんと判明した患者の乳房X線像115例(それぞれの症例で4画像中2画像を使用)で検証された結果、人為的介入なしに悪性病変の90%を分類でき、偽陽性は非常に少なかった。一方、現在のスクリーニング法(放射線科医の評価を含む)では、正確に検出されるがんは全体の77~87%となっている。
今回の研究で得られた知見からは、従来型の画像の中から特定の物体(例えば、イヌや車)を認識するために現在利用されている高コストの従来型CAD法が、低コストの深層学習を用いた方法に置き換えられて、放射線科医によるがん検出率の向上に役立つ可能性のあることが示唆されている。これに対してRibliたちは、新システムを検証したデータセットは、がんと分かっている画像の、小規模なデータセットに過ぎない点に注意を要する、と指摘している。
doi:10.1038/s41598-018-22437-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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