【進化】盲目の洞窟魚はインスリン抵抗性を進化させて飢えから逃れている
Nature
2018年3月22日
盲目の洞窟魚メキシカンテトラ(Astyanax mexicanus)は、脂肪を蓄積し、インスリン抵抗性と血糖恒常性の調節異常を進化させて、食料の少ない極限環境に適応したことを報告する論文が、今週掲載される。この新知見は、並外れた環境的負荷に対応するために極端な生理的手段の進化が起こったことを示唆している。
洞窟に生息する動物は、光合成をする植物と藻類がいないため、長期にわたる栄養欠乏に耐えなければならない。メキシカンテトラには、河川に生息する(表層)個体群と洞窟に生息する(洞窟)個体群があるが、それぞれの栄養素の利用可能性は著しく異なっている。洞窟魚は、飢餓に対する抵抗性を持っており、表層魚と比べて、食料が欠乏した時の体重の減り方が少ない。飢餓抵抗性に寄与する要因としては、代謝の概日リズムの低下、代謝速度の低下、体脂肪の増加など、いくつか同定されている。ただし、こうした適応の基盤となっている遺伝的変化については、ほとんど分かっていない。
今回、Nicholas Rohnerたちの研究グループは、メキシカンテトラの洞窟魚と実験室で飼育されたメキシカンテトラの表層魚の血糖値を比較し、摂食後の血糖値は洞窟魚の方が有意に高いことを明らかにした。次にRohnerたちは、短期または長期絶食時の血糖恒常性のダイナミクスを調べた。当初、表層魚の血糖値がわずかに低下したのに対して、洞窟魚の血糖値は有意に上昇したが、21日後には、表層魚の血糖値の低下がわずかだったのに対して、洞窟魚の血糖値が著しく低下した。このことは、血糖恒常性の調節異常が洞窟魚の特徴の1つであることを示唆している。また、Rohnerたちは、表層魚と洞窟魚のインスリン受容体遺伝子に違いがあること明らかにしており、このことは、インスリン抵抗性に関連する遺伝子変異の存在を示している。
doi:10.1038/nature26136
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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