【惑星科学】カルシウム同位体組成が地球-月系形成過程の解明の手掛かりに
Nature
2018年3月22日
さまざまな内部太陽系天体のカルシウム同位体組成分析が行われ、地球-月系の起源に関する知見が得られたことを報告する論文が、今週掲載される。カルシウムは、造岩鉱物の重要な成分であり、そのために太陽系の岩石惑星(水星、金星、地球、火星)を構成する物質に関する手掛かりとなり得る。
内部太陽系の天体の同位体組成には個体差があり、この差を利用すれば、隕石と岩石惑星の関係を調べることができる。この手法では、一般に、同位体組成の差が天体の原始惑星系円盤の中心からの距離を反映していることを前提とする。そのため、同位体組成が類似している地球と月の場合、この前提を地球-月系形成の標準模型(火星と同規模の天体が原始地球に衝突したと推測されている)と両立させることが難しい。
今回、Martin Schillerたちの研究グループは、隕石の母天体、小惑星ベスタ、火星、および地球の試料のカルシウム同位体組成を分析した。その結果、これらの母天体や惑星の質量とカルシウム同位体比が相関しており、これらの質量が、降着の時間スケールの代理指標となることが明らかになった。Schillerたちは、この相関は、原始惑星系円盤の岩石惑星形成領域全体のカルシウム同位体組成がゆっくりと着実に生じたことに起因しており、これは、太陽系外縁部から初期状態を保った物質が内部太陽系の熱処理された原始惑星系円盤へ流入したことの反映であり、この物質の流入が原始太陽への質量降着に関連していると推測している。また、Schillerたちは、地球と月のカルシウム同位体組成が非常に似ていることから、原始惑星系円盤の寿命の終わり近くで形成した原始惑星が月の形成につながる衝突に関係したことが示唆されていると結論付けている。
doi:10.1038/nature25990
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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