米国のエネルギー産業は予測困難になっている
Nature Energy
2018年3月27日
米国のエネルギー産業は、この10年間でより予測しにくく不安定になっており、年次傾向の極端な変動が増えていることを報告する論文が、今週掲載される。
市場と政策立案者は、米国エネルギー情報局や国際エネルギー機関などが作成するエネルギーの需要、供給、価格の予測に頼って、短期および長期のエネルギー政策やエネルギー取引について決定を下している。世界のエネルギー産業の複雑さゆえに、100%の正確性は期待できないが、政策決定者は、特に比較的安定した時期には、まだこうした予測に頼っている。
こうした予測の誤差の傾向を調べるため、Ines Azevedoたちはまず、1952年から2015年における石油価格などのエネルギーに関する重要な量の年次変化を算出し、前年比不安定性(year-on-year volatility)と名付けた。また、こうした変化は平均するとこの10年間で最も大きいことが明らかになった。次に彼らは、このような不安定性が予測誤差に与える影響を調べるため、燃料の価格設定、生産量、および消費量を含む重要な値について、1982年に開始された米国エネルギー情報局の年次予測とその後の実際の値とを比較した。その結果、不安定性が増した結果として、過去10年間の予測誤差が実際に大きくなっていることが分かった。このような不安定性の増大は、政策と投資戦略の適応性を高める必要があることを浮き彫りにしていると思われ、今回の知見は、石油価格だけでなく、将来の天然ガス料金や電力料金もより不安定になることを示している可能性がある。
doi:10.1038/s41560-018-0121-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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