拡大された、きらめく恒星
Nature Astronomy
2018年4月3日
数十億光年離れた銀河にある2つの「きらめく」星が、それらの星と私たちの間に存在する銀河団の重力による拡大能によって発見されたことを報告する2報の論文が、今週掲載される。それらの恒星の1つは、140億光年離れた所にあり、2000倍以上に拡大された。この研究は、拡大能を有する問題の銀河団内に隠された、暗黒物質についての情報を同時に明らかにする前例のない観測であった。
新星爆発や超新星爆発のような爆発現象を経るとき、恒星は急激に光度を変えることがある。最も明るい超新星は、最大で100億光年離れた所でも確認できるが、私たちの銀河系近傍のほとんどの恒星は、暗過ぎて個別に検出することができない。
2つの研究グループは、ハッブル宇宙望遠鏡を用いて、大質量の銀河団を含む空の一部を繰り返し観測した。これらの星団によって生じる巨大な重力場は、背後の恒星から届いている光を拡大するレンズのような働きをし、これによって、通常では観測できないような非常に遠方にある恒星も地球から十分観測することができた。
Steven Rodneyらが観測した恒星は、星の表面で反復性の爆発を起こしていることできらめいて見える。一方、Patrick Kellyらが発見した恒星は、レンズ効果を受けた恒星と、レンズ効果をもたらす銀河団との間の相対的な運動のためにきらめいて見える。
著者らはこれらの星のきらめきの研究によって、恒星そのものの物理的特性だけでなく、さらに重要なことに、レンズ効果をもたらしている銀河団中の暗黒物質の分布についても明らかにすることができた。暗黒物質は直接的に観測することはできないが、暗黒物質の付加的な質量によって、レンズ効果をもたらす銀河団内で観測される内部の運動を説明できると考えられる。
doi:10.1038/s41550-018-0405-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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