【地球科学】米国ミシシッピ川の河川工事による洪水危険の増大
Nature
2018年4月5日
ミシシッピ川の河川管理によって、洪水の規模が大きく、発生頻度が高くなっている可能性があり、氾濫のリスクが過去50年間で最高レベルに達していることを報告する論文が、今週掲載される。
2011年のミシシッピ川流域の洪水の際には、農業被害とインフラ被害が合計32億ドルに上った。それでも、ミシシッピ川では過去150年にわたり、流路の直線化、人工の盛土や人工水路の建設といった河川工事が行われている。しかし、これらの対策で所期の効果が得られたかどうかの評価は難しい。その理由として、ミシシッピ川の流量表には、人間による干渉が始まる1897年以前のミシシッピ川の自然変動が記録できていないことが挙げられる。
今回、Samuel Munozたちの研究グループは、ミシシッピ川の近くにある湖で採取された樹木と堆積物コアを観察して、これまでより長期間に及ぶ16世紀初頭以後の洪水歴を組み立てた。洪水によって浸水したカシの木は、異常な成長を示すため、年輪に洪水の年表が残されている。一方、ミシシッピ川が氾濫すると上流から運ばれてきた堆積物が氾濫原の湖に流れ込み、それぞれの氾濫に関する詳細な記録が得られる。Munozたちは、こうした研究結果を過去の気候記録と比較した。
今回の研究から、ミシシッピ川流域の洪水の規模が過去500年間に約20%増大し、20世紀中が最大レベルであることが示された。確かにミシシッピ川の水位は北太平洋上の気候変動によってゆっくりと上下するが、Munozたちは、これは洪水の規模が最近増大した原因の4分の1にすぎないことを明らかにした。洪水の危険が増した原因の残りの75%は、ミシシッピ川とその流域に人間が手を入れたことに由来していると、Munozたちは考えている。
doi:10.1038/nature26145
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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