【粒子物理学】反物質の高精度測定
Nature
2018年4月5日
反物質の分光測定に関して、これまでで最も高精度な測定が行われたことを報告する論文が、今週掲載される。この新知見で、反原子の分光測定の性能が確認され、超高感度で反物質を検証する方法の開発に一歩近づいた。
反物質ではなく物質が、ビッグバンを経て残った理由を説明することは、物理学者にとって長年の課題だった。このため、反物質を生成し、その特性を解明することが極めて重要になっている。分光測定の場合には、原子遷移の特性は、レーザーで原子を励起して原子が光を吸収あるいは発散する過程を調べることで解明される。これと同じ手法は反原子の研究にも適用できるが、反物質は生成と捕捉が難しいため、その特性を測定するのは難しい。
CERNの共同研究グループALPHAは、レーザーによる反水素原子の基底状態から励起状態への遷移(1S-2S遷移)を実験的に観測したことを報告する論文を、2017年にNatureで発表した。今回、ALPHAのJeffrey Hangstたちは、1S-2S遷移の超微細成分の1つの特徴を詳しく解明した。Hangstたちは、長さ280ミリメートル、直径44ミリメートルの円筒形の空間に反水素の原子約1万5000個を磁気的に補足し、これらの原子を測定した。この測定は10週間にわたって実施され、反水素原子の1S-2S遷移に共鳴する周波数が水素原子の1S-2S遷移に共鳴する周波数の予測値と2 ppt(1兆分の2)の精度で一致していることが明らかになった。
doi:10.1038/s41586-018-0017-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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