ある種の局所的抗生物質がウイルス感染への抵抗性を上昇させる
Nature Microbiology
2018年4月10日
細菌感染の治療に使われるある種の抗生物質が、宿主細胞を刺激して抗ウイルス状態を生じさせる、それによってヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、ジカウイルスの感染に対する宿主の脆弱性が低下することが、マウスで明らかになったとの報告が寄せられている。
抗生物質は、ヒトの細菌感染を治療するために広く使われているが、ヒトの体に対する直接的な作用はほとんど解明されていない。アミノグリコシドなど一部の抗生物質は、毒性が出る恐れがあるため、主に医療機関で命に関わる細菌感染の治療や、耳、目、口腔内の感染に対する局所軟膏として使用されている。
岩崎明子(いわさき・あきこ)たちは、ウイルス感染前に腟内や鼻にアミノグリコシドを局所的に使用すると、単純ヘルペスウイルス、A型インフルエンザウイルス、およびジカウイルスに対する宿主の抵抗性が高まると報告している。この抗生物質はマウス細胞に直接作用し、マウスの微生物叢には依存しない。岩崎たちは、アミノグリコシドが免疫系の“見張り役”である樹状細胞に情報伝達タンパク質を分泌させ、膣と肺の粘膜にウイルス抵抗性を生じさせることを明らかにした。この作用が起こるのは、ウイルス感染前に抗生物質を投与した場合に限られ、しかも効果は一過性であることも分かった。これらのことから、アミノグリコシドをウイルス感染の治療に使用するのは適切でない(ただし、アミノグリコシドを含む軟膏が、副次的な効果として、ウイルスに対するある程度の防御作用を示す可能性はある)。この研究から、抗生物質が患者の体にどのように直接的な影響を及ぼすのかが浮き彫りになり、抗ウイルス防御を活性化するための予想外の新しい方法が明らかになった。この知見が、アミノグリコシドの作用をまねて広範な抗ウイルス薬として作用し得る、より強力で毒性の低い新たな化合物の開発につながるかもしれない。
doi:10.1038/s41564-018-0138-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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