母親が妊娠中に患った炎症は新生児の脳の組織化やその後の作業記憶の質と関連している
Nature Neuroscience
2018年4月10日
母親が妊娠中に患った炎症が、生まれた子の新生児期の脳の組織化と2歳の時点での作業記憶のパフォーマンスに関連していることを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究では、両者間に直接の因果関係は確立されていないが、母親が妊娠中に患った炎症が新生児の脳の発達に重要な意味を持つことを明確にした過去の前臨床研究と公衆衛生研究の結果を裏付けている。
妊娠中の母親が感染症や負傷などが原因で患った炎症は、子の精神的・肉体的な健康問題の高いリスクと関連付けられていた。しかし、この関連をヒトにおいて直接的に観察することは難しい。
今回、Damien Fairたちの研究グループは、84人の女性を妊娠期から子育ての初期まで追跡調査した。まず、妊娠初期・中期・後期に妊婦の血液中の炎症性タンパク質の濃度を測定した。出産後は、機能的磁気共鳴画像法を用いて、乳児1人1人の安静時の脳の活動を測定し、新生児の脳内ネットワークの構成パターンを明らかにした。その後、子が2歳の時に課題を行わせる検査を実施し、確実に評価できる実行機能の重要側面である作業記憶(情報を一時的に保持する能力)を調べた。
Fairたちは、機械学習法を用いて、母体の炎症の程度と新生児の脳の組織化との間だけでなく、母体の炎症と子の幼児期の作業記憶との間にも強い関連性が認められることを明らかにした。具体的には、新生児の脳(特に作業記憶に関連する脳領域)における機能的接続性のパターンを用いて、妊婦の炎症の程度を予想できることが明らかになった。反対に、母体の炎症、特に妊娠後期における炎症の重症度が増すと、乳児の作業記憶の質が低くなると予想できる。
doi:10.1038/s41593-018-0128-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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