【進化】性差が大きい生物種は絶滅する可能性が大きい
Nature
2018年4月12日
性差が大きな生物種ほど絶滅する可能性が高くなることを明らかにした論文が、今週掲載される。
性選択の結果として、交尾相手の誘引や獲得競争に役立つ性質を有する一定数の個体の繁殖成功度が高まる。このため、両性間に顕著な身体的差異が生じるが、これを「性的二形」という。これが種の発達にどのような影響を与えるのか、という論点を巡っては、かなりの議論がある。性選択によって適応速度が上昇し、種が絶滅しにくくなるという考え方を示した研究がある一方で、誇張された性特異的な性質によって絶滅のリスクが高まるとした研究もある。ただし、それらの研究には限界がある。現生種だけを対象としており、実際の絶滅ではなく、その代理指標を用いているからだ。
今回、Gene Huntたちの研究グループは、この問題を解決するため、貝虫類の大量の化石記録(初めて出現した4億5000万年前から現在まで)を調べた。貝虫類は、小さな殻をもつ甲殻類で、程度に差があるが、性的二形を示す。雄の貝虫類は、通常、大きな性器を格納するために細長い殻を形成し、射精の質を高めると考えられる大型の筋肉質の精子ポンプも備えている。
Huntたちは、白亜紀後期(約6600~8400万年前)のミシシッピ川東部に生息していた93種の貝虫類を調べて、性的二形性が高い種ほど絶滅率が高く、性的二形性が最も小さい種の最大10倍に達していたことを明らかにした。繁殖への投資が大きい雄の貝虫類は、結果として、その他の生存のための機能に利用できる資源が少なくなっている可能性がある。もしこの傾向が他の動物にも見られるのであれば、絶滅の危険のある生物種の保全活動において強力な性選択を考慮に入れるべきだとHuntたちは結論付けている。
doi:10.1038/s41586-018-0020-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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