【神経科学】マウスの神経回路に子育てがどのように組み込まれているのか
Nature
2018年4月12日
マウスの視床下部の視索前野は、子育て行動の基盤となる大量の情報を統合するハブの役割を担っていることを報告する論文が、今週掲載される。具体的には、この視索前野のガラニン発現ニューロンが、子育ての運動的側面、動機付けの側面、ホルモン的側面、および社会的側面を調節することが、今回の研究で明らかになった。
子育ては、哺乳類の仔の生存と幸福にとって必須だが、子育て行動の個々の要素が脳回路レベルでどのように統合されているのかという点は、解明が進んでいない。
今回、Catherine Dulacたちの研究グループは、視索前野のガラニン発現ニューロン(MPOAGAL)の機能にとって、外部信号(例えば、仔やその他の環境刺激)と体内のホルモン情報と代謝情報の統合だけでなく、子育ての運動要素、動機付け要素、ホルモン要素、および社会的要素を調整する能力が必要だという仮説を提示している。
Dulacたちは、ウイルスを用いたニューロン追跡法によって、子育てをしていない雌雄のマウスにおいて、MPOAGALニューロンが20以上の脳領域から直接入力を受けていることを明らかにした。次にDulacたちは、子育て中のマウスのMPOAGAL活性を性別と生殖状態ごとに調べて、個々のMPOAGALのプールが、子育ての特徴的側面に特異的に割り当てられていることを明らかにした。こうした機能的構成は、脊髄ニューロンのプールによる運動シーケンスの制御を想起させるものであり、社会的行動の個別要素が脳回路レベルで生成される過程を示す新たなモデルとなっている。
doi:10.1038/s41586-018-0027-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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