【医学研究】肝臓のための「生命維持」システムで肝移植の成績向上を図る
Nature
2018年4月19日
移植用の肝臓を体温で保存すれば、移植の成績が向上し、ドナーから得る生存力のある肝臓が増え、その結果、移植を待機している患者の死亡率が低下する可能性のあることを報告する論文が、今週掲載される。
肝疾患の罹患率が上昇し、ドナーから得る生存力のある肝臓の供給量が不足している。ドナーから提供された肝臓の多くは、移植手術中に臓器の保存に用いられる冷蔵装置の中に入れている間に損傷しやすく、使用のリスクが大き過ぎると考えられている。低温保存中の肝臓に生存力があるかどうかを調べようとすると、細胞の正常な活動が抑制されて、うまくいかない。これに代わる方法として有望視されているのが、ドナーの肝臓を体温で保存し、常温機械潅流によって酸素化血液、薬剤、栄養素を注入する方法で、患者に生命維持装置を使用する場合にかなり似ている。この方法を用いれば、肝臓を24時間にわたって保存でき、将来的には、臓器の生存力をモニタリングしながら必要に応じて治療や修復を行える可能性がある。
今回、David Nasrallaたちの研究グループは、220人の肝移植患者を対象として、従来の低温保存と常温機械潅流を比較する無作為化試験を行った。Nasrallaたちは、肝損傷のバイオマーカーを測定し、常温潅流を行った場合には、低温保存と比べて、肝臓の平均保存期間が54%延長し、移植肝障害が50%減少し、肝臓の廃棄率が50%低下したことを明らかにした。また、移植後の1年間における両者の比較では、胆管合併症の発生率、および臨床的に認められたバイオマーカーによって予測される移植肝と患者の生存率のいずれにも、有意差が認められなかった。
同時掲載のStefan SchneebergerのNews & Viewsには、「正常な状態に近い状態で臓器を保存できれば、肝移植だけでなく、肝臓の手術や臓器の管理の点でも進歩をもたらす手段になり得る」と記されている。
doi:10.1038/s41586-018-0047-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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