グローバルツーリズムによる二酸化炭素排出
Nature Climate Change
2018年5月8日
グローバルツーリズムによる二酸化炭素排出量は、総排出量の8%を占め、これまで考えられていた量のほぼ4倍に達しているという知見を報告する論文が、今週掲載される。この新知見は、産業界の二酸化炭素排出量を減らす活動の成果が、エネルギーを大量に消費する旅行の需要に追いつかなくなっていることを示している。
グローバルツーリズムは、1兆ドル産業であり、環境にも大きな影響を及ぼす。過去に行われた観光産業の二酸化炭素排出量を定量化する研究では、温室効果ガス排出量が全球総量の2.5~3%に相当することが示唆されている。ただし、こうした推定値は、旅行先での飲食、インフラ、小売業だけでなく、交通機関の選択に伴う二酸化炭素排出量が考慮に入っていないことが多い。
今回、Arunima Malik、Manfred Lenzenたちの研究グループは、観光客の居住国からの二酸化炭素排出量を旅行先の国の排出量として計上する方法と、その逆を行う方法という2つの異なる計算手法を用いて、グローバルツーリズムの包括的分析を行った。その結果、海外旅行のライフサイクルを通じた二酸化炭素排出量の推定値が算出された。今回の研究結果は、全世界の温室効果ガス排出量の約8%がツーリズムによるものであり、国際的なツーリズムによる二酸化炭素排出量が2009~2013年に増加したことを示している。また、高所得国間の旅行がツーリズムによる二酸化炭素排出量に大きく寄与しており、豊かさの急速な広まりによって二酸化炭素排出量の増加が促進されていることも明らかになった。
研究グループは、これまでのところ、二酸化炭素排出量を抑えた旅行を奨励する活動では、グローバルツーリズムによる二酸化炭素排出量の増加を抑制しきれていない、と結論付けている。
doi:10.1038/s41558-018-0141-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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