海洋保護区は今も気候変動に脅かされている
Nature Climate Change
2018年5月8日
海洋保護区内の生態系が今も温室効果ガス排出の影響に脅かされていることを報告する論文が、今週掲載される。2050年までには、禁漁の海洋保護区の42%が、自然変動を超える海水の温暖化と酸素濃度の低下にさらされることが今回の研究で明らかになった。
今回、John Brunoたちの研究グループは、全世界の8263の海洋保護区(漁業が禁止された309地域を含む)を調査し、その結果に基づいて、中程度の排出と高程度の排出の両シナリオで海面水温と酸素濃度をモデル化し、海洋保護区内の生態系に対する影響を予測した。この影響予測から、Brunoたちは、それぞれの生態系のcommunity thermal safety margin(CTSM)を算出した。CTSMは、その生態系に存在する全ての生物種について、それぞれ許容温度とそのコミュニティーの最高気温の差を求めて、平均値を算出したものだ。CTSMを超えてしまうと、生物多様性が大幅に減少する可能性がある。
Brunoたちは、極地を除けば、海洋保護区の予想温暖化速度がそれ以外の地域に近いと予想されることを明らかにしている。CTSMを最初に超えるとみられるのが熱帯地方で、2050年頃とされ、その後、2150年頃には温帯地方でもCTSMを超えるとされる。
今回の研究では、生態系のストレス要因の出現状況に地域差があるため、1つのストレス要因のために海洋保護区を変更すると、その区域が別のストレス要因にさらされる恐れが生じることが明確になっている。
doi:10.1038/s41558-018-0149-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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