【ゲノミクス】古代ゲノムで見つかった人類史と肝炎に関する手掛かり
Nature
2018年5月10日
約1500~4500年前に生きていた137人のヒトのゲノム塩基配列について報告する論文と、これらのゲノムと共に青銅器時代の167人のヒトのゲノムを解析し、合計304人中25人のゲノムにB型肝炎ウイルス(HBV)の証拠が見つかったことを報告する論文が、今週掲載される。これらの新知見は、数千年間にわたって、ユーラシア全土でヒトのHBV感染があったことを示唆している。
Eske Willerslevたちは、第1の論文で、ハンガリーから中国北東部までの約8000 kmに及ぶ広大なユーラシア・ステップで生活していた137人の古代人のゲノム塩基配列を解読した結果を報告している。これらのゲノムは約4000年間を網羅している。Willerslevたちは、502人の現代人に自分の祖先の出身地(中央アジア、アルタイ、シベリア、コーカサス)を自己申告させて、そのゲノムデータを解析した。こうして得られた知見から、ユーラシア・ステップのヒト集団の歴史が明らかになり、青銅器時代のユーラシア出身の牧畜民から主に東アジア出身の騎馬兵士への移行がゆっくりと進んだことが示唆された。
また、Willerslevたちは第2の論文で、約200~7000年前に生きていた304人の中央ユーラシアと西ユーラシアの人々のDNA塩基配列を解析し、うち25人がHBVに感染しており、約4000年にわたってHBV感染があったことを示す証拠を報告している。Willerslevたちは、合計12点のHBVの完全ゲノムまたは部分ゲノム(現存しない遺伝子型を含む)を分離し、ヒトHBVと非ヒト霊長類HBVの現生種と共に解析した。その結果、現在の分布と一致しない領域に古代HBVゲノムが存在していたことと、少なくとも1つ以上の現存しない遺伝子型が明らかになった。
全世界で約2億5700万人が慢性HBV感染に苦しんでおり、2015年にはその合併症で約88万7000人が命を落としているが、HBVの起源と進化は解明されていない。古代のウイルスのゲノム塩基配列が今後新たに発見されれば、HBVの正確な起源と初期の歴史が明確になり、B型肝炎の負荷と死亡率に対する自然の変化および文化的変化の寄与の解明に役立つ可能性がある。
doi:10.1038/s41586-018-0097-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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