【量子物理学】ゲーマーたちが量子力学の検証を「パワーアップ」
Nature
2018年5月10日
全世界のゲーマーたちが競い合って乱数の数列を生成したことが、「局所実在性が破れる場合がある」という量子力学による予測の検証に役立った。この研究結果を報告する論文が、今週掲載される。
量子理論によって物理的現実を完全に記述できるかどうか、というテーマを巡っては、かなりの議論が巻き起こっている。この議論におけるキーワードは、局所性(ある地点で行われた行為によって、別の地点での実験結果が直ちに変わることはないという考え)と実在性(物理系には一定の値を有する特性があり、そのことは測定しなくても確定しているという考え)である。これらを調べるには、いわゆる「ベルテスト」が実施される。ベルテストでは、隠れた変数を援用してごまかすことなく、粒子間の量子相関を測定し、粒子について局所実在性の破れが起こっているかどうかを判定する。隠れた変数は、現在の量子力学理論によって説明できないため、隠れた変数を援用すると、量子力学理論は不完全なものになってしまう。
ベルテストの弱点として一般に言われているのが、「選択の自由」ループホールだ。つまり、研究者は、その実験における測定の設定を自由に選択できるように見えるが、その選択に影響を与える隠れた因子が存在している可能性があるというのだ。選択の自由を確保するため、検出器による測定の設定を選ぶために乱数生成器が用いられることが多いが、乱数生成器は真にランダムではないため、測定の設定は、隠れた変数に影響される可能性が残っている。
今回、BIG Bell Test CollaborationのMorgan Mitchellたちは、全世界から約10万人の参加者を募集し、ブラウザーを使ったゲーム“BIG Bell Quest”によって十分にランダムな数列を大量に生成した。このゲームでは、プレーヤーが0と1によって構成される予測不能な数列を生成することで、より難度の高い課題に進めるようになっている。2016年11月30日に約10万人のゲーマーが12時間にわたって1秒当たり1000ビット以上のデータをMitchellたちの研究チームに送り続け、その間に研究チームは、もつれた光子、原子集団、および超伝導デバイスを用いて、13種類の異なるベルテストとその他の局所実在性の検証を行った。大半の検証では、統計的に強力な局所実在性の破れが量子理論の予測通りに観測された。
doi:10.1038/s41586-018-0085-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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