【化学】周囲条件下での効率的なアンモニア生産
Nature Communications
2018年5月16日
窒素を利用可能で貯蔵可能なアンモニアへと、周囲条件下で電気化学的に変換するための触媒について報告する論文が、今週掲載される。この新知見は、これまでに報告された電気化学的変換法の中で最も高効率な方法の1つを示している。
世界人口が継続的に増加しているため、食料とエネルギーの増産が必要となる。食料の生産量を増やすためには、窒素含有量の多い肥料の使用量を増やして、作物の化学的ニーズに応じる必要がある。全世界で使用される窒素肥料のかなりの部分は、空気中の窒素をアンモニアに変換するハーバー・ボッシュ法という工業プロセスによって生産されている。全世界のアンモニア生産量は数百メガトンに達しているが、ハーバー・ボッシュ法は効率が非常に悪く、エネルギーを大量に消費する。この他にも、電気エネルギーを使って周囲条件下でアンモニア合成を行う方法があるが、これまでの研究によれば、この方法によるアンモニア合成は収量が少なく、効率も悪かった。
Xiaofeng Fengたちの論文では、触媒として、導電性カーボン担体上に凝集したパラジウムナノ粒子を用いる方法が紹介されており、この触媒と、水および電気を使って、窒素をアンモニアに変換する。今回の研究では、このナノ粒子を用いた方法によって、これまでに報告された同じ合成法よりも高い効率と選択性でアンモニアを合成できることが実証された。Fengたちは、中性の水を用いることで、この分野の多くの研究で悩みの種となっている不必要な副反応を抑制した。
電気と水と窒素を用いたアンモニア生産に関する研究は今回以外にも報告されているが、検出されたアンモニアは、空気中や実験室内の汚染物質から生じた可能性があった。今回の研究では、Fengたちは、気体窒素が合成アンモニアに変換されたことを明確に実証している。
doi:10.1038/s41467-018-04213-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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