Research Press Release
【神経科学】多発性硬化症における腸の役割
Nature
2018年5月17日
多発性硬化症(MS)の実験的なモデルマウスを使った研究で、腸内マイクロバイオームが変化すると、脳内の免疫細胞の活性が変化することを明らかにした論文が、今週発表される。この研究は、腸と脳の相互作用に関する我々の理解を深めるものであり、MSやその他の神経疾患の新たな治療薬の開発に役立つ可能性がある。
MSでは、通常は休止している脳内の免疫系が覚醒し、ミクログリアとアストロサイトという2種類の非神経細胞が活性化する。今回、Francisco Quintanaたちの研究グループは、MSのマウスモデルで、腸内細菌による食餌由来トリプトファンの代謝物によってミクログリアとアストロサイトの炎症誘発活性が低下することを明らかにした。また、MS患者の脳組織の研究も行われ、ヒトの脳において類似の機構が働いていることが示唆されている。
食餌由来トリプトファンの代謝物がミクログリアとアストロサイトの表面上の特定の受容体と結合すると、これらの免疫細胞の活性に変化が生じた。この受容体は、生体内で自然にできる他の化合物(ブロッコリーなどの植物由来の誘導体など)とも結合する。これに関連する分子経路の構成要素を標的とした治療薬は、将来的にはMSの治療に有用となるかもしれないが、今回の研究では、炎症性脳疾患が腸によって間接的に抑制される可能性のあることも示唆されている。
doi:10.1038/s41586-018-0119-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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