【ナノ科学】医療用ナノ粒子で農作物に栄養素を補給する
Scientific Reports
2018年5月18日
医療現場で薬剤の送達に用いられるナノ粒子が、農作物の栄養素欠乏の解消に役立つ可能性のあることを報告する論文が、今週掲載される。
リポソームと呼ばれるナノ粒子は、薬剤やその他の物質を封入し、生物学的障壁を越えて目的の生体組織に輸送することができる。ナノ粒子は、がんなどの疾患の治療薬の送達に有効であることが明らかになっている。
今回、Avi Schroederたちの研究グループは、完全に成長したチェリートマトの木とその実生に対して、ナノ粒子を使って栄養素を送達できるかどうかを検証した。Schroederたちは、マグネシウム欠乏症と鉄欠乏症のチェリートマトに対して、マグネシウムと鉄を組み込んだナノ粒子と、ナノ粒子に組み込まれていない市販のマグネシウムと鉄を散布した。ナノ粒子を散布されたチェリートマトは、標準的な農業用栄養素を使っても解消できない急性の栄養素欠乏症を克服した。ナノ粒子を散布された栄養素欠乏症のチェリートマトは、散布から14日後に栄養素欠乏症から回復したが、標準的な農業用栄養素を散布されたチェリートマトは回復しなかった。
また、Schroederたちは、散布されたナノ粒子がチェリートマトの葉と根全体に広がってから細胞に取り込まれて、中の栄養素を放出したことを明らかにした。今回の研究によって得られた知見は、農業分野でのナノテクノロジーの利用を拡大することで作物の収量を増やすというアプローチが有望なことを示唆している。
doi:10.1038/s41598-018-25197-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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