【生態学】気候変動で身を隠せなくなった白い毛色のイタチ
Scientific Reports
2018年5月25日
積雪日数が減ると白い冬毛のイタチ科動物の生存率が下がる可能性があるとする研究結果を報告する論文が、今週掲載される。Karol Zubたちの研究グループはこの論文で、冬が短くなると白い毛色のイタチ科動物の隠蔽的擬態の効果が下がり、捕食者の攻撃を受けやすくなるという考えを示している。
イタチ科動物のイイズナ(Mustela nivalis)には、冬毛がそれぞれ白色と茶色の2つの亜種があり、一般的に同じ生息地で共存している。周囲の色と同じ毛色で隠蔽的擬態したイイズナは、捕食されることが少なく、生存率が高いと考えられている。
Zubたちは、1997~2007年にポーランドのビャウォヴィエジャの森でイイズナ(冬毛が白色の95匹と茶色の23匹)を捕獲し、記録を作成した。また、Zubたちは、同期間中に同地域で収集された気象データを調べて、万年雪の平均積雪日数が約80日から40日に減ったことを明らかにした。その主たる原因は全般的な冬の短期化であり、近年はさらに積雪が消滅する時期が早まっている。Zubたちは、白い冬毛のイイズナの占める割合が積雪日数に応じて減ったことも明らかにした。
Zubたちは、毛色がそれぞれ白色と茶色のイイズナのモデルを用いて、キツネ、オオカミ、猛禽類などの捕食者による発見に毛色が影響を及ぼすかどうかを調べた。その結果、隠蔽的擬態の効果が十分でないイイズナのモデルは、背景色と一致した毛色を有するイイズナのモデルより高い頻度で捕食者に発見されることが判明した。今回の研究で得られた知見は、積雪量が相対的に少ない環境下で捕食者によって発見される個体数が増えたことが、白い毛色のイイズナの個体数が減っている原因であることを示唆している。
doi:10.1038/s41598-018-26057-5
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