Research Press Release
過去の汚染物質の再流動化
Nature Climate Change
2011年7月25日
北極の氷と海水は、毒性汚染物質の長期的吸収源となっているが、気候変動によって、こうした汚染物質が再流動化していることが明らかになった。毒性化合物への曝露を減らすためのさまざまな努力が、この現象によって台無しになる可能性が生じていることが示唆されている。この研究成果を報告する論文が、Nature Climate Change(電子版)に掲載される。
残留性有機汚染物質(POP)については、その製造と使用が規制されたため、近年、北極の大気中に存在するPOPの量は減少傾向を示していた。しかし、POPは分解されにくいため、その多くが、海水と氷といった貯蔵庫に貯蔵されたままになっている。
POPは気候変動によって貯蔵庫から再流動化する可能性があるが、そうした影響を示す観測的証拠は少ない。今回、Maたちは、20年間にわたる北極の大気中のPOP濃度記録とモデルによる証拠に基づき、温暖化と海氷の後退によって過去10年間に海水と氷などの貯蔵庫からのPOPの放出量が増加したと結論付けた。
環境中のPOPの存在量は、今後も減少を続ける可能性が高いが、今回Maたちが調べた長期的吸収源の化合物の再流動化、そして、そのほかの類似の化合物の再流動化の可能性によって、こうした物質の大気輸送が再び起こると考えられる。
doi:10.1038/nclimate1167
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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