【古生物学】初期四肢動物の進化は塩分が変動する水中環境で始まった
Nature
2018年5月31日
初期四肢動物(初めて陸上で真の歩行を行った脊椎動物)は、河口域のように塩分が変動する水域に生息していたことを報告する論文が、今週掲載される。
四肢動物は、水中から陸上に進出した動物として有名だが、主に水中で生息し、水中を泳ぐための鰓と強力な尾を持っていた。しかし、どのような種類の水域に生息していたかについては激しく議論されてきた。最初の化石は砂岩の中から見つかり、当初は淡水中に堆積したものと考えられた。ところが、四肢動物の化石と足跡化石が汽水性(わずかな塩分)水域および海水域に由来する堆積物から発見され、初期四肢動物がさまざまな塩分の水域で生息可能だったことが示唆されていた。
今回、Jean Goedertたちの研究グループは、中国北西部とグリーンランド東部のデボン紀(約3億6500万年前)の岩石から発見された51点の初期四肢動物の化石標本を、同時に発見された甲冑魚類と肉鰭魚類の化石と共に分析した。炭素と酸素だけでなく硫黄の同位体比も測定できる新たな方法を用いたことで、淡水動物と海洋動物を区別できた。
Goedertたちは、この硫黄同位体測定法が現生脊椎動物(ワニ類やミシシッピアカミミガメ、さまざまな魚類など)に使用できることを実証した上で、今回の研究対象である化石の四肢動物とその他の脊椎動物が淡水と海水が混合した環境(例えば、河口域や三角州)に生息していたことを明らかにした。このことから、Goedertたちは、四肢動物がさまざまなレベルの汽水性に適応できたと結論付けている。こうした多能性は、デボン紀後期の絶滅を生き延び、その後陸上に定着する上で役立った可能性がある。
doi:10.1038/s41586-018-0159-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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