【古生物学】古代爬虫類の化石発見によるトカゲ類の進化系統樹の見直し
Nature
2018年5月31日
有鱗目(ヘビ類とトカゲ類が含まれる現生動物の分類群)につながる進化系統上に位置する動物種として最古のものが、約2億4000万年前の三畳紀中期に生息していたことを報告する論文が、今週掲載される。この新知見によれば、有鱗目の出現とそれより大きな双弓類爬虫類系統の分裂が起こったのは、2億5200万年前のペルム紀/三畳紀の大量絶滅より前のことだったとされる。この大量絶滅をきっかけに爬虫類が出現したとこれまで考えられていたが、実は、大量絶滅は爬虫類系統内での多様化の新たな機会であったかもしれない。
有鱗目は、陸生脊椎動物の中で最も多様化の進んだ大型分類群で、トカゲ類とヘビ類が含まれる。しかし、化石記録上、最古のものとして知られる有鱗目化石と有鱗目が出現した推定年代の間には7000万年の空白があり、爬虫類の系統樹研究には有鱗目が十分に組み込まれておらず、さらに最近の解剖学的研究とDNA研究による有鱗目の進化史の内容が矛盾しているため、有鱗目の出現についての理解に混乱が見られる。
今回、Tiago Simoesたちの研究グループは、アルプス山脈のイタリア側で発見されていたMegachirella wachtleriの化石を再び調べて、有鱗目も含まれるより広範な分類群である鱗竜亜綱に分類し直した。また、高解像度のCATスキャナーを用い、骨格化石の中にこれまで気付かなかった特徴(有鱗目に特有の小さな下顎骨など)を発見した。これと並行して、Simoesたちは、これまでで最大の化石と現生爬虫類のデータセットをまとめて、有鱗目の進化史上のMegachirellaの位置を評価した。
今回の研究で得られた知見からは、これまでに分かっている中でMegachirellaが有鱗目の系統で最も古い動物種であり、真の有鱗目で最古のものとして知られるジュラ紀の動物種より約7200万年も古いことが示唆されている。この新知見は、有鱗目とその他の爬虫類の出現時期に関する我々の理解の空白部分を埋めるために役立ち、これらの爬虫類の多様化が始まったのがペルム紀/三畳紀の大量絶滅から間もない時期だったことを明らかにしている。
doi:10.1038/s41586-018-0093-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
化学:アルゴリズムは、ウイスキーの最も強い香りと原産地を嗅ぎ分けることができるCommunications Chemistry
-
天文学:月の年齢はより古いNature
-
気候変動:南極の海氷減少が嵐の発生を促すNature
-
天文学:天の川銀河の超大質量ブラックホールの近くに連星系を発見Nature Communications
-
惑星科学:土星の環が若々しい外観を保っている理由Nature Geoscience
-
惑星科学:木星の衛星イオに浅いマグマの海はないNature