【環境】サンゴ礁は沿岸地帯を高潮から守り被害額低減に寄与している
Nature Communications
2018年6月13日
サンゴ礁がなければ全世界の高潮による年間予想被害額が倍増していたとする論文が、今週掲載される。この新知見は、サンゴ礁によって人々の生命と財産に利する海岸保全効果がもたらされるだけでなく、高潮被害額の抑制にもつながることを実証している。
今回、Michael Beckたちの研究グループは、高潮モデルを用いて、全世界のサンゴ礁によって人々の生命と財産が保護される効果の年間予想額を推定した。今回の研究では、発生確率の異なる4つの暴風雨事象について、サンゴ礁がある場合とない場合のシナリオを立て、それぞれの高潮の状況を比較した。なお、「サンゴ礁がない場合」は、「サンゴ礁がある場合」よりもサンゴ礁の高さと粗度が1メートル低い場合と定義した。その結果、極端な事象(100年に一度の暴風雨事象で、各年の発生確率が1%)が起こった場合には、「サンゴ礁がない」と、高潮浸水被害額が91%増加して、2720億ドル(約30兆円)に達するという予測が示された。また、Beckたちは、サンゴ礁の維持管理活動の恩恵を最も受けるのがインドネシア、フィリピン、マレーシア、メキシコ、キューバであり、各国で高潮浸水被害額が4億ドル(約440億円)低減することを明らかにした。
Beckたちは、世界のいくつかの場所でサンゴ礁の平坦化が観察されている一方で、サンゴ礁の状態が良好な地域も存在し、サンゴが繁殖している地域すらあることに注意しなければならないことを指摘している。つまり、この論文で報告された影響は、不可避な結末ではないのだ。論文には、政策立案の際にサンゴ礁の経済評価を有益な情報として考慮に入れることの重要性も明確に示されている。
doi:10.1038/s41467-018-04568-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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