【気候科学】1992年以降に南極から失われた氷は合計で3兆トン
Nature
2018年6月14日
1992年から2017年までに南極氷床から約3兆トンの氷が失われたとする論文が、今週のAnalysisに掲載される。この数値は、約8ミリメートルの平均海面上昇に相当する。
南極の氷床は、全球の海面水位を58メートル上昇させるだけの水を含んでいて、気候変動の重要な指標であり、海面上昇の駆動要因である。現在の氷床の質量収支(質量の増加と減少の正味のバランス)を解明することは、氷床の質量の将来的な変化可能性を見積もる上で極めて重要だ。1989年以降、南極の氷量減少の計算が150通り以上行われている。
氷床質量収支の相互比較研究(IMBIE:Ice sheet Mass Balance Inter-comparison Exercise)チームは、1992年から2017年までに実施された24例の独立した衛星観測結果に基づく氷床の質量収支見積もりを、氷床表面の質量収支のモデル研究と組み合わせて分析した。今回の研究では、1992年から2017年までに、海洋による融解によって西南極の氷量減少速度が年間530億トンから1590億トンへと、3倍に増加したことが明らかになった。一方、南極半島の氷量減少速度は、氷棚の崩壊のために年間約70億トンから330億トンに増加した。これに対して、東南極の質量収支は、依然大きな不確かさはあるが、ほぼゼロである。IMBIEチームは、氷床の質量収支の評価をさらに改善することは可能であり(例えば、1990年代に得た人工衛星の測定結果の再評価がその役に立つかもしれない)、人工衛星による観測の継続が非常に重要なことも変わらない、という考えを示している。
このAnalysisは今週号のInsightの一編であり、今号のInsightは、南極の過去と現在、そして予想される未来についての多様な側面を探究する特集である。この特集では、南極と南極周辺に関する現在の知識をまとめ、南極に対する人間活動の影響を明らかにしている。
doi: 10.1038/s41586-018-0171-6 | 英語の原文doi: 10.1038/s41586-018-0182-3 | 英語の原文
doi: 10.1038/s41586-018-0172-5 | 英語の原文
doi: 10.1038/s41586-018-0179-y | 英語の原文
doi:10.1038/s41586-018-0173-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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