金星の自転に対する大気の引力
Nature Geoscience
2018年6月19日
金星の自転は、密度が大きく高速で流れる大気が惑星表面で山脈と相互作用をするに従って速度を変化させていることを報告する論文が、今週発表される。
金星は、243日(地球時間)に1回というゆっくりとした速度で自転している。しかし、探査機による測定結果は、金星の正確な1日の長さと一致しない。理由の1つと考えられるのが、最近あかつき探査機によって発見された、現れたり消えたりする大気の巨大弓状構造である。金星の大気は、惑星そのものよりもはるかに速く動いている(地球時間で4日に1回転する)にもかかわらず、この構造は山岳地帯の上に静止したままである。このことから、巨大弓状構造は、低層大気が山脈地形の上で上昇することによって発生した大気の波であると示唆されている。もしこれが正しいならば、大気と固体惑星はこれまで考えられていたよりも密接に関連している可能性がある。
この仮説を検証するために、Thomas Navarroたちは金星大気循環のシミュレーションを行った。その結果、この弓状構造は、山脈の上で午後にのみ形成されて夕方には消えてしまう大気の波によって、確かに説明できることが分かった。また、Navarroたちは、このような大気の波の形成が大気圧の変動を引き起こし、こうした変動が固体惑星の回転速度を、その1日の時刻に依存して実際に変化させることを明らかにした。
Navarroたちは、「この効果は小さく、火星の1日の長さを数分変化させる程度のものだが、固体惑星と大気との相互作用は、金星の自転速度に対する過去の観測の間に見られる不一致の少なくとも一部を説明できる可能性がある」と述べている。
doi:10.1038/s41561-018-0157-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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