【創薬】GABA-A受容体の構造からベンゾジアゼピンの作用機序が分かった
Nature
2018年6月28日
A型γ-アミノ酪酸受容体(GABA-A受容体)は、広範な医薬品とレクリエーショナルドラッグの作用を介在しており、神経疾患と精神疾患の治療標的にもなっている。このGABA-A受容体の構造について報告する論文が、今週掲載される。今回の新知見は、将来的な神経疾患と精神疾患の薬物療法の開発に役立つ可能性がある。
脳内での迅速な抑制性神経伝達には、主に神経伝達物質GABAとそのシナプス標的であるGABA-A受容体が介在している。GABA-A受容体は、中枢神経系における心理的活性に重要な役割を担っており、その機能不全はてんかん、不安神経症、不眠症などの疾患につながることがある。また、GABA-A受容体は、さまざまな薬物、例えば、バルビツール酸系薬、麻酔薬、アルコール、そして、ジアゼパム(セルシン/ホリゾン)やアルプラゾラム(ソラナックス/コンスタン)などのベンゾジアゼピン系薬の標的になっている。
今回、Ryan Hibbsたちの研究グループは極低温(クライオ)電子顕微鏡を用いて、GABAとフルマゼニル(薬剤の過剰服用に対する解毒剤)と結合したGABA-A受容体の構造を決定したことを報告している。また、Hibbsたちは、GABA-A受容体がベンゾジアゼピン系薬の影響を受ける過程を示した上で、GABA-A受容体のタンパク質サブユニット間の特異的界面の部位を明らかにした。この部位は、新薬開発の標的となる可能性がある。今回のHibbsたちの研究は、Cys(システイン)ループ型受容体ファミリーに属する分子に関する理解を深め、GABA-A受容体を標的とする薬剤の開発に役立つ可能性がある。
doi:10.1038/s41586-018-0255-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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