【環境】ディープウォーター・ホライズン原油流出事故が沈没船のマイクロバイオームに及ぼした影響
Scientific Reports
2018年6月29日
2010年に起こったディープウォーター・ホライズン原油流出事故が、メキシコ湾の海底に横たわる第二次世界大戦期および19世紀の沈没船の船上とその周囲のマイクロバイオームに永続的な影響を及ぼしたことを報告する論文が、今週Scientific Reportsに掲載される。
ディープウォーター・ホライズン原油流出事故で海中に流出した原油のうち、およそ11~30%は所在が分からないままである。今回、Leila Hamdanたちの研究グループは、海中に残留する原油が、原油流出の痕跡が残る海域に位置する古い沈没船に対してどのような影響を及ぼしているのかを調べた。この海域の深海の生息地は、今でも影響を受け続けている可能性が高い。古い沈没船は、人工岩礁として機能し、生物多様性のホットスポットになっており、沈没船上とその周辺の海底に存在する微生物群集は、沈没船の保存と分解に重要な役割を果たしている。
Hamdanたちは、水深、流出地点までの距離、および87日間続いたディープウォーター・ホライズン油井からの原油流出による船舶表面の汚染の程度に基づいて7隻の沈没船を選んだ。そして、影響の大きかった海域、影響が中程度だった海域、基準域における沈没船の周辺の堆積物のマイクロバイオーム、物理的性質、および化学データを比較した。その結果、ディープウォーター・ホライズンの流出事故の影響が最も小さかった海域では、沈没船からの距離と表面堆積物における微生物の多様性が関連していることが分かった。沈没船に近い場所でのマイクロバイオームと沈没船から離れた場所でのマイクロバイオームとの間に有意な差異が認められたのだ。これに対して、原油流出の影響が最も大きい海域にある沈没船では、沈没船に近い位置でのマイクロバイオームと、沈没船から離れた位置でのマイクロバイオームに違いは見られなかった。Hamdanたちは、流出原油の残渣が存在していることが、その原因であるかもしれないと考えている。
doi:10.1038/s41598-018-27350-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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